バックアップという単語にはいろいろな意味が含まれます。パソコンなど機械分野では主に「万一のため、データの複製を別の場所に保存しておく」、こんな作業のことを示しています。
あれ?「複製」?
「別の場所」って?
「万が一」って??
機械が壊れたり、トラブルが起きたりしたときのこと?
では具体的に「バックアップ」について確認してみましょう。
1.バックアップはなぜ必要なのか?
重要な書類は、例えば「宅配の伝票」などは、書いて作ると複写された控えやコピーが手元に残ります。
物品コレクターの方は「飾る用」「保存用」と同じものを2つ所有して、広い意味でのバックアップにしています。
スマートフォンやデジタルカメラでは「万が一のバッテリー切れのため」、同じタイプのバッテリーやモバイルバッテリーを持ち歩く方も増えてきました。
これらの考え方と同様に、パソコンなど機械が扱う大切なデータのバックアップは、万が一の時のために必要不可欠になっています。
2000年代初頭は、パソコンで扱うデータは数MBほどで、現在の「1000分の1」程度のサイズでした。それでもパソコンの不意なフリーズやデータの破損、操作ミスなどで「保存し忘れた」ときは、非常に苦労させられました。デジタル機器が増えた現代では、今や数GB(ギガバイト)のサイズがあるデータを使った作業も一般的になりつつあります。
数MBのデータ損失でも大変な苦労をしていたのに、現代では、扱うデータの容量が増え、1000倍とか1万倍というサイズなのです。そんな大きさのデータに万が一のことが起こったら、「ああ、そうですか」と諦められるでしょうか?
そんな万が一のデータ破損・損失ときに、すばやく復帰させられる備えこそが「バックアップしておくこと」になります。
でも、いったい何をどうしたらいいのでしょうか?方法を確認してみましょう。
2.Windows10標準機能での2つのバックアップ方法
イメージバックアップ
データのバックアップには、「ファイル」「フォルダ」「アーカイブ」「イメージ」のサイズやバックアップに含める範囲によって、いくつかの方法があります。
それぞれ用途に応じて
- ファイルだけのバックアップ
- フォルダごとのバックアップ
- アーカイブでのバックアップ
- イメージバックアップ
を行うことで、バックアップが可能です。
自分で作成したり、ネットから取り込んだりしたデータは個別の「ファイル」という(名前をつけて管理できる)形となり、保存されていきますね。文書ファイルや音楽ファイル、画像や写真ファイルなどデータをまとめ、区切ってファイルとして保存されます。
「フォルダ」は、複数の文書ファイルや複数の音楽ファイルなどをグループ分けして、それぞれ種類ごとの「フォルダ」を作って、そこへ集めて管理しやすくするために使用します。
「アーカイブ」は、複数のファイルやフォルダをひとつにまとめることです。複数のファイルやフォルダをまとめて圧縮(サイズを小さく)した「圧縮ファイル」と似た意味合いでも使われます。
もっとも「まとめる範囲が広い」ものが「イメージファイル」と呼ばれるものです。たとえばハードディスクやSSD、DVDのすべてのデータ(ファイルやフォルダ構成を丸ごと)を、ひとつのファイルにしたものが「イメージファイル」や、単に「イメージ」と呼ばれます。
全データを含んだイメージファイルは、まさにバックアップするためにうってつけで、その作業を「イメージバックアップ」と略して示します。簡単な操作でパソコンの現在の状態を丸ごとバックアップを行うため、万が一のトラブルには強いのですが、全データのバックアップを行うため、少々作業時間が掛かってしまうので、毎日行うには向いていません。
フォルダごとのバックアップ
必要なデータのサイズが大きい場合にイメージファイルにすると、それを保存できるストレージが足らなくなったり、作業時間が非常に掛かってしまいます。
こんなときは、地道な作業になりますが絶対に失いたくないファイル(多くはフォルダ)を選んで、個別に「コピー&ペースト」で外付けHDDやUSBメモリなどにバックアップを行っていました。
今ではこの作業を自動化する機能がOS(ウインドウズ)に搭載されるようになりましたので、最初に設定さえしてしまえば後はWindowsが自動で行ってくれますので、負担はだいぶ軽くなり、作業漏れなどのミスも無くなりました。
便利な機能ですが、デメリットもあります。
隠しファイルやコピー不可とされたファイルやフォルダ、そして「ウインドウズの起動から動作に関するデータ、機械のスタートに関わる基礎的なファイル(システムやブートファイル等)」がバックアップ出来ません。これらのバックアップを行うには「イメージバックアップ」が必要になります。
3.バックアップの保存先にはどんなものがある?
クラウドストレージ
クラウドストレージは、スマートフォンでは主流となりつつあるバックアップ用の保存先です。クラウドは、ほぼインターネットと意味する単語です。インターネットで結ばれた先にあるストレージへ、サイズ(容量)が許す限りバックアップできます。
とくにサイズが小さい「ファイルやフォルダごとのバックアップ先」として、利用されています。「許可」している場合は、使用している本人が気づかない内に自動的にOSやソフトがバックアップを行っている場合も多いです。
保存先も管理された別の機器(サーバ)内のストレージなので、データの守りも安全かつ、手軽に(もしくはほったらかしで)バックアップできることが特徴とメリットです。
デメリットは「インターネットが使えない等のトラブルが起きたとき」に一切、何もできない点。そしてクラウドストレージの管理者がデータを保守しているため、情報漏えいの危険性が(限りなく低いとは思われますが)ゼロではない点です。
クラウドストレージについての詳しい解説は、以下のページを参照ください。
NAS
そのまま「ナス」と呼びますが、これはファイルサーバとして使う専用機器のことです。シンプルにたとえると「クラウドストレージ」のLAN版(狭い範囲、自宅、オフィス内)です。
ユーザ自身が管理者になれ、さらに自宅やオフィス内のネットワークだけを経由して、データのやり取りからバックアップまでできます。
特徴はクラウドストレージとほとんど同じで、デメリットだった情報漏えいの危険性は低くなります。ただ自宅やオフィスで使うネットワーク機器や、パソコン等の端末がネットワーク関係のトラブルに見舞われたとき、できることが限られてくる点は、不安材料です。
NASについての詳しい解説は、以下のページを参照ください。
外付けHDD(ハードディスクドライブ)
一番簡単で堅実なバックアップ先です。イメージバックアップを行う場合は、大きなサイズ(大容量)のHDDが必須です。
デメリットとしては、一般的なUSB接続の外付けHDDの場合は、ケーブルが届く範囲でのみしか利用できない点、パソコンの傍に置いて使用しますので、不意に衝撃が加わったり、飲み物をこぼしてしまったり、落雷の被害にあってしまうと、パソコンと同時に故障してしまうリスクがあります。この点はバックアップとしては致命的です。
ただそれでも、自分自身の手元で器機からデータを管理でき、ケーブルを使った接続なので情報漏洩に対するセキュリティーは堅固、さらに設定してバックアップすれば、外付けHDDから動かなくなった機械を起動(ブート)すら可能になるメリットがあります。
USBメモリ
外付けするメモリ類は、小さいファイルであれば、手軽に簡単にバックアップが取れるのがメリットです。
デメリットをあげるのなら、改善はしてきていますがバックアップに使えるサイズ(容量)が小さいこと。大きなサイズのメモリはまだまだ高価ということ。そして、小型で持ち運びできるため「紛失する」という危険があります。また、メモリの特性上、データが突然消失して故障してしまうことがあります。
DVD-R・BD-R
これら「光学メディア」へもバックアップはできます。ところが現状、パソコンを含めた機械に光学メディアを使う装備がないことが増えてきています。基本的に一度書き込んだら変更が出来ないため、コストと扱いやすさでUSBメモリに負けています。また、バックアップできるサイズもUSBメモリに比べてかなり小さいです。
これら光学メディアをあえて使う意味は、古いタイプの機器で小さなバックアップや、仲間内で写真や動画をコピーして配布するのに使用したりなどに限られてきました。太陽光に弱いという特徴もあり、長期保存には向かないため、今では使い勝手のあまり良くない、小容量のメモリ的な存在です。
4.まとめ
「デジタル」の恐ろしい点は、「アナログ」と違い、「データ(ファイル)を正常に使える」か「データが破損して、まったく使えない」のどちらかになってしまう点です。アナログ媒体の保存装置でしたら、ファイルが一部分壊れたけれど、少しは使えたり、画像でしたら、ノイズ(乱れ)ができたものの、まだ見てあつかえたりしつつ、徐々に壊れていくパターンでした。
しかしデジタル器機とデジタルデータは、「前触れなく」いきなり全損します。
手軽にあつかえる反面、最悪な特徴を持っています。
最後に、間違えているとバックアップ自体が無意味になるため、ひと言。
同じ機械や場所に、イメージだろうとファイルだろうと、それらをバックアップしていても「一緒にトラブルが起きる」ので保存先は別の器機で、さらに安全な所を選んでください。
極端な話、自宅が火事になってしまったり、泥棒に盗まれてしまったら、自宅に置いてあるデータは消えてしまいますが、バックアップの保存先をクラウドストレージなどの外部に指定していれば、元通り復活させられます。
本当に無くなると困るデータは、手元のHDDとクラウドストレージなど、複数の保存先を選択することをオススメします。
コメント